音響有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)は、離散化誤差以下でヘルムホルツ方程式を厳密に解きます。回折のような現象もモデル化できます。また、窓のような構造物と音響との相互作用もモデル化することができます。しかし、要求される要素の大きさは、波長に比例するため、要素数が増加すると、計算が大規模になってしまいます。それゆえ、下記例題2の『小さな部屋の解析1』を行なうような場合は、FEMとBEMを使用します。また、ディフューザ(反射器)やアパーチャア(穴)の防音設計分野では、FEMとBEMによって解析評価をおこなえます。
2250Hzにおける圧力振幅の分布 |
2250Hzにおける圧力振幅の分布 |
図は、天井が取り去られた小さな部屋のモデルです。
これは6m×4m×2.5mの直方体を基に、隅の丸みや戸棚、暖炉、窓の特徴を付け加えたものです。
境界は剛体であるものとします。ただし、窓は、ガラス製とし、床は、2種類の床張り材を表現する、2つのアドミッタンス値を与えて解析されます。
空気は、2次パッチから構成され、音響境界要素メッシュによってモデル化されています。
窓は、構造用シェル要素によってモデリングされ、またそれは流体要素に結合され解析されます。
解析される周波数範囲は、0.5Hzステップで10Hzから150Hzまでです。
聴取位置での周波数に対する音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)のグラフ
グラフより高および低吸音性の床の解析の両方で、約17Hzに初めの共振周波数があることがわかります。この周波数は、窓の初めの共振周波数と一致します。
17Hzでの音圧分布 |
音圧分布アニメーション |
強調した変形形状図 |
強調した変形形状のアニメーション |
高および低吸音性の床の両方の解析より、共振周波数が52Hzにも存在することが分かりました。なお、6m×4m×2.5mの直方体の部屋の1,1,0モードが51.79Hzであることに注目してください。
52Hzでの音圧分布 |
動画のコンタ図 |
さらに、高および低吸音性の床の両方の解析より、共振周波数が81Hzにも存在することが分かりました。なお、6m×4m×2.5mの直方体の部屋の0,1,1モードが80.19Hzであることに注目してください。
81Hzでの音圧分布 |
動画のコンタ図 |
部屋の中の一面の壁際に2つの点音源があり、その反対側の壁際には吸音構造(Rockwool)を持つ空間があります。壁、床、天井は、剛体とします。また、1つの聴取点を設けています。この解析は、この部屋の内部での散乱を解析します。空気は、2次の四面体ソリッドで構成され、音響有限要素メッシュによりモデル化されています。Rockwoolの空間は、吸音特性にDelany Bazelyモデルを使い有限要素メッシュによりモデル化されています。解析される周波数は、5Hzステップで10Hzから200Hzとしました。
空気の密度 (ρ) = 1.2 kg/m3
空気の体積弾性率 (K) = 138720 N/m2
音速 (c) = 340 m/sec
図1-1 部屋の構造 |
図1-2 点音源の位置と聴取位置 |
図2-1 50Hzでの音圧(振幅)分布 |
図2-2 100Hzでの音圧(振幅)分布 |
図2-3 200Hzでの音圧(振幅)分布 |
図4-1 50HzでのSPL分布 |
図4-2 100HzでのSPL分布 |
図4-3 200HzでのSPL分布 |
図4-4 200Hzでの断面のSPL分布 |